2024年11月21日

冬でも要注意!高齢者が脱水症になりやすい原因と対処法

冬場の原因不明の頭痛や胃もたれなどの体調不良は、実は脱水症によるものかもしれません。体内の水分量が不足したときに起こる脱水症は、食事や水分の摂取量が減りがちな高齢者に起こりやすく、注意が必要です。
高齢になると喉の渇きを感じにくくなり、特に冬は、夏と違い暑さで汗をかくことも少ないため、水分補給を怠ると、気が付かないうちに脱水症状に陥ることがあります。この段階で正しい処置を施さないと、重症化して命にかかわることがあります。
今回は、万が一、脱水症のサインが現れても、慌てずに対処できるように、高齢者の脱水症の原因、応急処置と予防法についてご紹介します。
水分補給

高齢者が脱水になりやすい理由

脱水症は年齢を問わず誰にでも起こりうる可能性がありますが、特に高齢者が脱水症に陥りやすいのには、高齢者特有の理由があります。

身体の水分量と筋肉量が減る

身体のほぼ半分を占める水分量(体液)は、成人だと体重の約60%ですが、65歳以上の高齢者の場合は約50%に減ります。加えて、高齢になると水分を備蓄できる筋肉量も減るため、若い頃よりさらに脱水症になりやすいといえます。

喉の渇きを感じにくい

高齢になると感覚機能が低下し、口の渇きに気づきにくくなるので、喉が渇いていないと思って水分を摂らないままでいると、自覚症状がないうちに脱水症をおこしやすくなります。
また、冬場はマスクをしているので、より喉の渇きに気付きにくくなります。

トイレを避けるため水分を十分に摂取しない

筋力が衰えてトイレまでの移動が億劫になったり、尿失禁を心配して、トイレに行く回数を減らそうと水分の量を控えてしまう人も多いようです。

腎臓機能の低下

体内の水分量を調整する役割がある腎臓の働きも加齢とともに低下するため、体内の水分や電解質を留める力が落ち、脱水症の原因になることもあります。

食欲不振、嚥下障害による水分摂取量の低下

1日の水分摂取量は、「食事+飲み物」で約2リットルが必要とされています。
高齢になると運動量も低下し水分を摂取する行動が妨げられたり、食欲不振や、食べ物を飲み込むことが困難になる嚥下障害などにより、食欲が低下し、食事量が減ると、毎日の食事から十分な量の水分を摂取することができない状況から起きる場合もあります。

利尿作用のある薬を飲んでいる

血圧を下げる降圧薬には利尿作用をもたらす種類があり、尿の排出で必要な塩分や水分が不足して脱水症を引き起こすことがあります。

脱水症のセルフチェック法

次の症状に該当するときは、脱水症に陥っている可能性があるので注意が必要です。

●手の甲をつまむ
手の甲をつまみ上げて離した後、跡が3秒以上残る
●口内の状態
舌が赤黒く乾いている。口の中が粘ついたり、つばも少なく、飲み込みづらい。
●爪を押す
爪を押して離した時に、元の赤みに戻るのに3秒以上かかる
●尿の色の濃さ
体内の水分量が少なくなり脱水症が進むににつれて、濃い黄色→オレンジ色→茶褐色と、尿の黄色味が濃くなっていきます。

脱水症のサインと対処法

脱水症のサインを軽度から重度までご紹介します。
万が一脱水症のサインが現れても、すぐに対処できるように、応急処置の方法をチェックしておきましょう。

軽度


 
 
・肌や唇が乾燥してかさつく
・立ちくらみや、めまいがする
・食欲不振や、食べ物が喉を通りにくい
・倦怠感やだるさ
 
 
 
 

◇対処法
通常の水分補給であれば、スポーツドリンクでも十分ですが、軽度から中程度の脱水症を起こしている人には、十分な水分と、体の機能調節に必要不可欠なミネラルである電解質を補える、経口補水液が適しています。嚥下障害がある場合は、ゼリータイプの経口補水液がおすすめです。医師から塩分摂取についての指示がある場合は、飲ませる前に相談してください。

脱水症の症状が現れてから4時間以内に、経口補水液を500~1000mLを目安量として無理のない速さで飲みましょう。その後は、ゆっくりと飲みながら様子を見ましょう。水の場合は、1日あたり2Lが目安となります。
尿量が増えてきたり、尿の色味が薄くなってきたら、脱水症が改善されている証拠です。食欲もでてきて、食べることができるようになってきたら温かく消化のいい食べ物(おかゆ・よく煮たうどんなど)を少量から、様子を見ながら食べる量を増やしていきましょう。

中度

・頭痛
・トイレの回数が少ない
・胃もたれや下痢など、腹部の不快感
・吐き気

◇対処法
中度の脱水症の場合も経口補水液を摂取しましょう。下痢の症状がある場合は、排泄する度に水分を少しずつ摂取します。嘔吐した場合は、最初はティースプーン1杯分の経口補水液を、5~10分の間隔をあけて飲み、徐々に増やしていき、吐いた量と同じくらいの量を飲む必要があります。
落ち着いてきたら軽度の脱水と同じように対処してみましょう。

重度

・意識障害など、話しかけても反応しない
・身体がけいれんしている

◇対処法
口からの水分摂取では間に合わない可能性があるため、すみやかに病院に行き医師の診断を仰ぎましょう。自己判断で対処すると、命の危険もありますので、病院で点滴などの医療処置を受ける必要があります。

自宅で出来る経口補水液の作り方

1Lの水に食塩(3g)と砂糖(40g)を溶かし、レモンやグレープフルーツなどの果汁を加えるとスッキリと飲みやすくなり、カリウム補給にもなります。

予防

脱水になりやすい高齢者が脱水症を防ぐための、簡単に取り入れやすい予防や対策をご紹介します。

自分に合ったこまめな水分摂取

必要な量には個人差がありますが、1日に1,000~1,500mL程度の水分をこまめに摂る習慣をつけましょう。
慢性的に水分が不足しがちな高齢者の場合は、服薬と同じように1日の中で時間を決めて、こまめに水分を摂ることがポイントです。
まずは、朝起きた時にコップ1杯以上の水を飲みましょう。就寝中も汗をかき、体液が減っているため水分が不足しています。そして、のどが渇いていなくても2~3時間おきに水分を摂取することを心がけましょう。
また、食事から摂取する水分も必要不可欠のため、汁物で食事の水分量を増やしてみるのもよいでしょう。牛乳、ヨーグルト、甘酒、果物などを、メニューに加えると、水分も栄養も補給できます。特に朝食はしっかりとりましょう。

乾燥対策を行う

水分補給をするだけではなく、唇や皮膚など乾燥している部分を保湿し、水分の蒸発を防ぐのも冬の乾燥する時期は特に大切です。
加湿器や濡らしたタオルを室内に干して湿度を保ったり、定期的に窓を開けて換気をして、室内の気温・湿度管理などで乾燥対策も併せて行うと効果的です。

まとめ

高齢者の脱水症は自身も気が付かないうちに陥る事もあります。高齢者が脱水症になりやすい理由として、身体の水分量低下、喉の渇きを感じにくい、食欲不振などさまざまな理由があります。
こまめな水分摂取を意識し、できるだけバランスの良い食事を心がけたり、乾燥対策をして、健康的に過ごして脱水に気を配りましょう。